筆者は先日、虫を食べた。去る11月23日に東京・中野で開催された「東京虫食いフェスティバル」でのことだ。今回で4回目になるこの通称虫フェスは、昆虫の採集でも観察でも飼育でもない、“虫を食べること”について焦点を当てたイベント。公式サイトには、「開催日は、勤労感謝の日。地球生態系における虫たちの働きに感謝する日でもあります」とある。何が何だか……。
【写真:閲覧注意! 虫料理の数々】
プログラムを見ると、タイ・ラオスの最新昆虫食リポートや、食用昆虫科学研究会による活動報告といった研究寄りのプレゼンに始まり、昆虫料理研究家・内山昭一氏や昆虫食ポータルサイト「むしくい」管理人・ムシモアゼルギリコ氏、虫ガールブロガーのメレ山メレ子氏などが繰り広げる虫トーク、「星舟庭」による虫ソング&朗読のパフォーマンスまで用意されている。そして、最後には、世界初の「昆虫料理アワードグランプリ」を実食&審査するとのこと。
筆者は“ソッチ側”の人間ではないので、虫フェスについてもごく一部の虫を食べる人種が細々とよろしくやっているイベントなのかと最初は思っていた。だが、いざ会場に潜入すると、客席には開演を待ちわびる人、人、人! そして、会場後方の、虫料理を販売する屋台ゾーンは、中が見えないほどの行列が……。
●店員さんにオススメを聞いてみる
世の中にはこんなにも虫食い人が多かったのか。日本は一体どうなっているんだ……。屋台に並ぶ人々は「何食べるー?」「バッタおいしそうじゃない?」「いや、でも全部食べたいな」「とりあえず全部いっとくよね」ときゃあきゃあ相談し合う。心から楽しそうだ。
来たからには、開演までに少しでも虫料理と仲良くなっておくべきなのか……逡巡したのち、おそるおそる屋台をのぞいてみることに。メニュー表には、バッタ、アリ、蚕――とよく知っている虫の名前がずらり。バッタは草むらを飛び回るもの。アリは庭の隅をちょろちょろ歩くもの、のハズが、目の前には変わり果てた姿となった虫たちが料理として並んでいた。
筆者 どれが食べやすいですか?
屋台の店員Aさん 茶飯は普通の茶飯ですよ。蚕の糞を煮だしたお茶で炊いたご飯なだけで。
屋台の店員Bさん バッタもシラスみたいでおいしいですよ! 形はバッタそのものですが。
筆者 いやいやいやいや、その“形”が大問題じゃないですか!
屋台の店員Cさん じゃあ、アリジャムかなぁ? これなら普通のイチゴジャムの味だよ。
検討の結果、アリジャムを食べてみることに。確かに味は普通のイチゴジャムだ――時折、プチッとした不思議な食感のものが舌に当たる以外は。
屋台の店員Cさん 「イチゴジャムの中に、蟻の卵と成虫と幼虫が入ってるんですよ」
筆者 ……(聞かなきゃよかった)
●虫食い文化の発展を願って熱いトークショーが……!
そうこうしているうちに、トークショーが始まった。それぞれ約20分の持ち時間の中、タイ・ラオスの昆虫食研究班は、現地のフォトリポートに加え、カブトムシを調味料で和える「カブトムシのたれ」の作り方を映像で紹介していく。
一方、食用昆虫科学研究会の蟲喰ロトワ氏は、今年参加してきた虫食イベントを振り返りながら、第一印象で虫を気持ち悪がる層に虫食い文化を広める苦労を嘆く。また、自身が養殖したバッタから作る「バッタ醤油」「バッタ茶」といったバッタ食の研究報告に加え、「バッタペーパー」「バッタ染め」などの工芸品についても発表していた。バッタのフンの6割は繊維のため、工芸に適しているのだという。
来場者は、もともと虫を食べる層と、興味本位でやって来た層が半々くらいだろうか。半分以上の客がトークショーを聞きながらナチュラルに蚕茶飯やバッタを食べている。ムシャムシャほおばる姿を見ていると、なんだか本当においしそうに思え、ここにいると虫を食べないほうがマイノリティーな気すらしてくる。自分がおかしいのか、この会場がおかしいのか、よく分からなくなってきたところで、ムシモアゼルギリコ氏とカベルナリア吉田氏による虫カルチャートークのコーナーが始まった。
ムシモアゼルギリコ氏 このコーナーでは、マンガやゲーム、映画などを引き合いに、“なぜ多くの人は虫を怖がるのか”について考えてみたいと思います。原因の1つとして、小さい頃にうっかり読んだ虫マンガがトラウマになっているというのがあると思うんですよ。
カベルナリア吉田氏 え、虫マンガ読む子どもってそんなに多いか?(笑)
ムシモアゼルギリコ氏 ネット上で有名なトラウママンガに「蝉を食べた少年」というのがあるのですが、今回はそれを紹介しようと、ザックリと実写化した映像を作ってきました。
ムシモアゼルギリコ氏 「蝉を食べた少年」は、いじめっこのツヨシ君が、アキラ君に無理矢理セミを食べさせたら、アキラ君がセミ人間になってしまい、最後はセミ人間のアキラ君がツヨシ君を公園に埋めて復讐に成功。めでたしめでたし、というストーリー。虫を食べたら虫人間になってしまったわけです。
カベルナリア吉田氏 こういう恐いマンガは、虫のネガティブキャンペーンになってますよね。
ムシモアゼルギリコ氏 でもね、私はこういう虫モチーフを楽しみながらも、虫食いって楽しいなって思うんですよ
カベルナリア吉田氏 今日この会場にいる皆さんは明日あたり虫人間になってるってことになりますけど……。
ムシモアゼルギリコ氏 はい、セミになるくらい一生懸命みんなでセミを食べたいなと思っています
強引にまとめるムシモアゼルギリコ氏。虫料理のおいしさについては全然分からなかったが、登壇者たちが虫食い文化の発展を心から願っていることだけはよく分かったトークショーの数々だった。
●世界初! 虫料理のレシピのコンテスト!
いよいよラストは、今回の虫フェスの目玉でもある「第1回昆虫料理レシピアワード」の時間だ。照明が落ち「ジムノペディ 第1番」(サティ)の生演奏に合わせて、司会がものものしい雰囲気で説明を始める。事前公募で集まったレシピのうち、第1次選考を通過した上位5作品を、ステージ上で4人の審査員が実食。順番に出てきた虫料理と、それぞれのレシピ、審査員コメントは以下の通りだ。
・エントリーNo.1 「バグパエリア」(考案者:サトシーT氏)
【レシピ】ゴキブリ、セミ、イナゴ、バッタなど、好みの虫を揚げ、普通のパエリアと同じ要領で野菜と米を炒め、スープを加える。ざっと平らに整えたら、上に野菜と揚げた虫を乗せ、ハチノコを乗せて、フタをしてたく。
【審査員のコメント】「虫とサフランライスが非常に相性がよい」「虫料理はどうしても色が茶色系になりがちだけど、サフランライスやパプリカが鮮やかな色を演出していてとてもキレイ」。
・エントリーNo.2 「ミールワームとチーズの春巻き」(考案者:吉崎将氏)
【レシピ】ミールワームを素揚げにし、ゆず胡椒を塗った春巻きの皮に、チーズ&大葉とともに巻いて揚げる。
【審査員のコメント】「揚げたミールワームは単体でもサクサクしておいしいのですが、それを春巻きで巻いて揚げることでよりサクサク感が出て非常に食べやすい」「クリームチーズで親しみやすく、さらに柚子胡椒で味付けされているところがニクい」。
・エントリーNo.3 「蚕のリアルニョッキ」(考案者:松本裕介氏)
【レシピ】蚕をゆでてすりつぶし、外皮などを取り除く。ゆでた桑の葉と下処理した蚕をフードプロセッサーで混ぜる。小麦粉、卵、塩・コショウを加えてこね、適当なサイズにまるめてゆでる。ゴルゴンゾーラソースを作って、好みでパルメザンチーズとクルミ(ローストタイプ)を加える。
【審査員のコメント】「蚕がすりつぶしてあるので、虫を材料に使ってると言われなければ気付かずに食べられる。虫っぽさが少なくて物足りなければ、横に添えてある素揚げを一緒に食べると歯ごたえがあっていいと思います」。
・エントリーNo.4 「イナゴのおこわ」(考案者:石倉卓也氏)
【レシピ】イナゴを赤くなるまでゆでてから後ろ足・はねを切り落とし、胸の真ん中あたりを切る。人参、しいたけ、イナゴ(腹側)を炒め、調味料で味を整える。炒めた具材を加えてもち米を炊く。カットしたイナゴ頭部は、佃煮にして一緒に食べる。
【審査員のコメント】「すごくモチモチのおこわの中にイナゴの香ばしさが効いている。口の中に秋の田んぼが広がるみたいな気持ちがしました」。
・エントリーNo.5 「はんぺんチーズのミールワーム揚げ」(考案者:蓬田至氏)
【レシピ】はんぺんをフードプロセッサーでピューレ状にし、1センチメートル角にカットしたプロセスチーズ、パセリ、片栗粉を加えて好みの形にする。揚げたワームを衣としてまぶして揚げる。
【審査員のコメント】「外側がサクッと揚げたミールワームで、かじると中身ははんぺんという、食感の変化は芸術性が高いですね」「写真で見るほど強烈ではなく、おいしさの余韻に浸っています」
虫料理が審査員たちの前に出てくるたびに、我先にと撮影とコメント取りのために前のほうへ群がっていた記者たち。いまだかつてこんなに虫料理にフラッシュがたかれたことがあっただろうか。異様な熱気を残したまま、審査員たちはグランプリの審査へと入った。
数分の審議の結果、グランプリに輝いたのは……エントリーNo.1の「バグパエリア」。レシピ考案者のサトシーT氏への優勝トロフィーの授与、そして喜びのスピーチで「第1回昆虫料理レシピアワード」は幕を閉じた。
終了後、「優勝作品のバグパエリア、先着順で皆さんも試食ができます」と観客へアナウンスされた瞬間、あっという間に行列ができた様子を見て、虫食の訴求力を感じざるを得なかった。前出のムシモアゼルギリコ氏は「セミの鑑賞やゴキブリの飼育だなんて、食べ頃のベリーを観察しているようなものですわ」と言い切る。この言葉、そして会場全体の虫食への熱狂、やはり頑なに虫を嫌う私のほうが間違っているのだろうか。好きと嫌いは紙一重。こうして虫料理と触れ合ううちに「クラスのアイツ、嫌っていたハズなのに気付いたら目で追っていたの……」みたいな感じで、いつの日か虫料理と分かり合える日が来るのかもしれない……。
●勇気を出してグランプリ「バグパエリア」実食
ということで先着順で配られた「バグパエリア」を筆者もどうにか入手。勇気を出して食べてみることにした。試食の行列に間に合わず肩を落として帰っていったお客さんもいた手前、あんまり嫌そうに食べるわけにはいかない。
セミ、ゴキブリ、バッタなどと一緒にたかれたパエリアではあるものの、偶然私が食べたところに入っていたのは小さなハチノコだけだったため、食感も気にならず、不覚にもおいしいと思ってしまった。虫料理と少し、ほんの少しだけ、距離が縮まった貴重な瞬間であった。
※虫料理を楽しむ際は生食を避け、衛生面に注意しましょう。
(朝井麻由美)
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プログラムを見ると、タイ・ラオスの最新昆虫食リポートや、食用昆虫科学研究会による活動報告といった研究寄りのプレゼンに始まり、昆虫料理研究家・内山昭一氏や昆虫食ポータルサイト「むしくい」管理人・ムシモアゼルギリコ氏、虫ガールブロガーのメレ山メレ子氏などが繰り広げる虫トーク、「星舟庭」による虫ソング&朗読のパフォーマンスまで用意されている。そして、最後には、世界初の「昆虫料理アワードグランプリ」を実食&審査するとのこと。
筆者は“ソッチ側”の人間ではないので、虫フェスについてもごく一部の虫を食べる人種が細々とよろしくやっているイベントなのかと最初は思っていた。だが、いざ会場に潜入すると、客席には開演を待ちわびる人、人、人! そして、会場後方の、虫料理を販売する屋台ゾーンは、中が見えないほどの行列が……。
●店員さんにオススメを聞いてみる
世の中にはこんなにも虫食い人が多かったのか。日本は一体どうなっているんだ……。屋台に並ぶ人々は「何食べるー?」「バッタおいしそうじゃない?」「いや、でも全部食べたいな」「とりあえず全部いっとくよね」ときゃあきゃあ相談し合う。心から楽しそうだ。
来たからには、開演までに少しでも虫料理と仲良くなっておくべきなのか……逡巡したのち、おそるおそる屋台をのぞいてみることに。メニュー表には、バッタ、アリ、蚕――とよく知っている虫の名前がずらり。バッタは草むらを飛び回るもの。アリは庭の隅をちょろちょろ歩くもの、のハズが、目の前には変わり果てた姿となった虫たちが料理として並んでいた。
筆者 どれが食べやすいですか?
屋台の店員Aさん 茶飯は普通の茶飯ですよ。蚕の糞を煮だしたお茶で炊いたご飯なだけで。
屋台の店員Bさん バッタもシラスみたいでおいしいですよ! 形はバッタそのものですが。
筆者 いやいやいやいや、その“形”が大問題じゃないですか!
屋台の店員Cさん じゃあ、アリジャムかなぁ? これなら普通のイチゴジャムの味だよ。
検討の結果、アリジャムを食べてみることに。確かに味は普通のイチゴジャムだ――時折、プチッとした不思議な食感のものが舌に当たる以外は。
屋台の店員Cさん 「イチゴジャムの中に、蟻の卵と成虫と幼虫が入ってるんですよ」
筆者 ……(聞かなきゃよかった)
●虫食い文化の発展を願って熱いトークショーが……!
そうこうしているうちに、トークショーが始まった。それぞれ約20分の持ち時間の中、タイ・ラオスの昆虫食研究班は、現地のフォトリポートに加え、カブトムシを調味料で和える「カブトムシのたれ」の作り方を映像で紹介していく。
一方、食用昆虫科学研究会の蟲喰ロトワ氏は、今年参加してきた虫食イベントを振り返りながら、第一印象で虫を気持ち悪がる層に虫食い文化を広める苦労を嘆く。また、自身が養殖したバッタから作る「バッタ醤油」「バッタ茶」といったバッタ食の研究報告に加え、「バッタペーパー」「バッタ染め」などの工芸品についても発表していた。バッタのフンの6割は繊維のため、工芸に適しているのだという。
来場者は、もともと虫を食べる層と、興味本位でやって来た層が半々くらいだろうか。半分以上の客がトークショーを聞きながらナチュラルに蚕茶飯やバッタを食べている。ムシャムシャほおばる姿を見ていると、なんだか本当においしそうに思え、ここにいると虫を食べないほうがマイノリティーな気すらしてくる。自分がおかしいのか、この会場がおかしいのか、よく分からなくなってきたところで、ムシモアゼルギリコ氏とカベルナリア吉田氏による虫カルチャートークのコーナーが始まった。
ムシモアゼルギリコ氏 このコーナーでは、マンガやゲーム、映画などを引き合いに、“なぜ多くの人は虫を怖がるのか”について考えてみたいと思います。原因の1つとして、小さい頃にうっかり読んだ虫マンガがトラウマになっているというのがあると思うんですよ。
カベルナリア吉田氏 え、虫マンガ読む子どもってそんなに多いか?(笑)
ムシモアゼルギリコ氏 ネット上で有名なトラウママンガに「蝉を食べた少年」というのがあるのですが、今回はそれを紹介しようと、ザックリと実写化した映像を作ってきました。
ムシモアゼルギリコ氏 「蝉を食べた少年」は、いじめっこのツヨシ君が、アキラ君に無理矢理セミを食べさせたら、アキラ君がセミ人間になってしまい、最後はセミ人間のアキラ君がツヨシ君を公園に埋めて復讐に成功。めでたしめでたし、というストーリー。虫を食べたら虫人間になってしまったわけです。
カベルナリア吉田氏 こういう恐いマンガは、虫のネガティブキャンペーンになってますよね。
ムシモアゼルギリコ氏 でもね、私はこういう虫モチーフを楽しみながらも、虫食いって楽しいなって思うんですよ
カベルナリア吉田氏 今日この会場にいる皆さんは明日あたり虫人間になってるってことになりますけど……。
ムシモアゼルギリコ氏 はい、セミになるくらい一生懸命みんなでセミを食べたいなと思っています
強引にまとめるムシモアゼルギリコ氏。虫料理のおいしさについては全然分からなかったが、登壇者たちが虫食い文化の発展を心から願っていることだけはよく分かったトークショーの数々だった。
●世界初! 虫料理のレシピのコンテスト!
いよいよラストは、今回の虫フェスの目玉でもある「第1回昆虫料理レシピアワード」の時間だ。照明が落ち「ジムノペディ 第1番」(サティ)の生演奏に合わせて、司会がものものしい雰囲気で説明を始める。事前公募で集まったレシピのうち、第1次選考を通過した上位5作品を、ステージ上で4人の審査員が実食。順番に出てきた虫料理と、それぞれのレシピ、審査員コメントは以下の通りだ。
・エントリーNo.1 「バグパエリア」(考案者:サトシーT氏)
【レシピ】ゴキブリ、セミ、イナゴ、バッタなど、好みの虫を揚げ、普通のパエリアと同じ要領で野菜と米を炒め、スープを加える。ざっと平らに整えたら、上に野菜と揚げた虫を乗せ、ハチノコを乗せて、フタをしてたく。
【審査員のコメント】「虫とサフランライスが非常に相性がよい」「虫料理はどうしても色が茶色系になりがちだけど、サフランライスやパプリカが鮮やかな色を演出していてとてもキレイ」。
・エントリーNo.2 「ミールワームとチーズの春巻き」(考案者:吉崎将氏)
【レシピ】ミールワームを素揚げにし、ゆず胡椒を塗った春巻きの皮に、チーズ&大葉とともに巻いて揚げる。
【審査員のコメント】「揚げたミールワームは単体でもサクサクしておいしいのですが、それを春巻きで巻いて揚げることでよりサクサク感が出て非常に食べやすい」「クリームチーズで親しみやすく、さらに柚子胡椒で味付けされているところがニクい」。
・エントリーNo.3 「蚕のリアルニョッキ」(考案者:松本裕介氏)
【レシピ】蚕をゆでてすりつぶし、外皮などを取り除く。ゆでた桑の葉と下処理した蚕をフードプロセッサーで混ぜる。小麦粉、卵、塩・コショウを加えてこね、適当なサイズにまるめてゆでる。ゴルゴンゾーラソースを作って、好みでパルメザンチーズとクルミ(ローストタイプ)を加える。
【審査員のコメント】「蚕がすりつぶしてあるので、虫を材料に使ってると言われなければ気付かずに食べられる。虫っぽさが少なくて物足りなければ、横に添えてある素揚げを一緒に食べると歯ごたえがあっていいと思います」。
・エントリーNo.4 「イナゴのおこわ」(考案者:石倉卓也氏)
【レシピ】イナゴを赤くなるまでゆでてから後ろ足・はねを切り落とし、胸の真ん中あたりを切る。人参、しいたけ、イナゴ(腹側)を炒め、調味料で味を整える。炒めた具材を加えてもち米を炊く。カットしたイナゴ頭部は、佃煮にして一緒に食べる。
【審査員のコメント】「すごくモチモチのおこわの中にイナゴの香ばしさが効いている。口の中に秋の田んぼが広がるみたいな気持ちがしました」。
・エントリーNo.5 「はんぺんチーズのミールワーム揚げ」(考案者:蓬田至氏)
【レシピ】はんぺんをフードプロセッサーでピューレ状にし、1センチメートル角にカットしたプロセスチーズ、パセリ、片栗粉を加えて好みの形にする。揚げたワームを衣としてまぶして揚げる。
【審査員のコメント】「外側がサクッと揚げたミールワームで、かじると中身ははんぺんという、食感の変化は芸術性が高いですね」「写真で見るほど強烈ではなく、おいしさの余韻に浸っています」
虫料理が審査員たちの前に出てくるたびに、我先にと撮影とコメント取りのために前のほうへ群がっていた記者たち。いまだかつてこんなに虫料理にフラッシュがたかれたことがあっただろうか。異様な熱気を残したまま、審査員たちはグランプリの審査へと入った。
数分の審議の結果、グランプリに輝いたのは……エントリーNo.1の「バグパエリア」。レシピ考案者のサトシーT氏への優勝トロフィーの授与、そして喜びのスピーチで「第1回昆虫料理レシピアワード」は幕を閉じた。
終了後、「優勝作品のバグパエリア、先着順で皆さんも試食ができます」と観客へアナウンスされた瞬間、あっという間に行列ができた様子を見て、虫食の訴求力を感じざるを得なかった。前出のムシモアゼルギリコ氏は「セミの鑑賞やゴキブリの飼育だなんて、食べ頃のベリーを観察しているようなものですわ」と言い切る。この言葉、そして会場全体の虫食への熱狂、やはり頑なに虫を嫌う私のほうが間違っているのだろうか。好きと嫌いは紙一重。こうして虫料理と触れ合ううちに「クラスのアイツ、嫌っていたハズなのに気付いたら目で追っていたの……」みたいな感じで、いつの日か虫料理と分かり合える日が来るのかもしれない……。
●勇気を出してグランプリ「バグパエリア」実食
ということで先着順で配られた「バグパエリア」を筆者もどうにか入手。勇気を出して食べてみることにした。試食の行列に間に合わず肩を落として帰っていったお客さんもいた手前、あんまり嫌そうに食べるわけにはいかない。
セミ、ゴキブリ、バッタなどと一緒にたかれたパエリアではあるものの、偶然私が食べたところに入っていたのは小さなハチノコだけだったため、食感も気にならず、不覚にもおいしいと思ってしまった。虫料理と少し、ほんの少しだけ、距離が縮まった貴重な瞬間であった。
※虫料理を楽しむ際は生食を避け、衛生面に注意しましょう。
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