「インド人完全無視カレー」「イケてるしヤバい男 長島」「オモコロ 〜あたまゆるゆるインターネット〜」、そして「地獄のミサワLINEスタンプ」など、ネットでウケるヒットコンテンツを次々と世に生みだしている会社がある。ねとらぼ読者の皆様ならその名をご存知かもしれない、「バーグハンバーグバーグ」だ。
【インタビュー写真】
時に世の中を風刺するメッセージもある彼らの企画は、一見「ちょっとやりすぎか?」と思えることもあるが、毎回見たものの笑いを誘い、愛されている。一体、ネットでバズるコンテンツはどのようにして生まれているのか、バーグハンバーグバーグのルーツはどこにあるのか、代表のシモダテツヤさんに話を聞くため会いに行ってきた。
●クライアントに却下された“ボツ企画”
―― Webでウケる企画が定評のバーグハンバーグバーグさんですが、過去にクライアントからボツにされた企画案を教えてください。
ソフトバ○クのプロモーションで「12カ月で孫○義さんの肉体が完成するデアゴスティーニ(※)風プロモーション」を提案しました。毎月孫さんの肝臓とか顔とかのパーツがばらばらと届きます。で、11カ月で丸裸の孫さんができあがって、最終号に付いてくる鎖かたびらを首からぶら下げて完成と。もちろん創刊号はお得じゃないといけないので心臓を2つ付けるつもりでした。ちなみにこのときは、念のための代案も持っていきました。それが「こすると孫○義さんの耳の後ろの臭いがするスクラッチカード」でした。が、これもボツでした。
※デアゴスティーニ:毎月届くパーツを組み立てると模型等ができあがるシリーズが人気の分冊百科
味の○さんの「Cook Do」(※1)のときもボツになってしまいましたね。あの商品ってテレビCMでチンジャオロースをものすごくおいしそうに食べるじゃないですか。そこで、イケてるしヤバい長島さん(※2)ってハゲを小部屋に閉じ込めて7日間水しかあげず、餓死寸前まで追い込んでチンジャオロースをあげたらどうなるか、という実験をやろうとしました。でも本当に餓死してしまった場合はさすがに味の○さんにご迷惑をおかけするから、1週間味のないものだけをあげようと妥協案も提出しました。なにもかけてない豆腐だけを1週間あげ続けたら、人が発狂する寸前を見れるんじゃないか、さすがにおいしそうに食べるんじゃないかと思ったんです。
※1Cook Do:切った野菜や肉などの食材に加えて炒めるだけで料理ができてしまう中華合わせ調味料シリーズ
※2長島さん:イケてるしヤバい男 長島
●バーグハンバーグバーグ流のWebでウケる企画の作り方
―― ……ボツにしておくのがもったいない企画ばかりですね。Webでウケる企画ってどうやったら思いつくんですか?
基本的には社員全員でアイデア大喜利を行なっています。最初にプロモーションの目的とかを共有し、「普通に作るならこういう形」という話をします。そして、そこから一旦離れてボケにボケを重ねていきます。大喜利じゃないと突飛なものって出てこないんです。ボケにボケを重ねて、最後にお客さんのニーズと整合性を取るようにしています。
ちょっとふざけたような提案をして大丈夫なのかとよく言われますが、バーグはお笑いの会社なのでお客さんもウチに声をかけてくださる時点で、おふざけを期待されていると思うんですよ。最近はいろんな企業さんがコンプライアンスを気にしすぎてはっちゃけた企画ができなかったりします。怒られないようにと気にしすぎて、安全策を過剰に取りすぎてどっかで見たような面白くない企画になってしまうときってあるじゃないですか。もしそうなったら引くか、またほかの案を提案します。
―― 不動産投資サイト「楽待(※)」の特設サイトも大喜利で企画したんですか?
※楽待:国内最大の不動産投資サイト。特設サイトでは金持ちを持ち上げ、貧乏人を見下すキャラが登場
「楽待」のサイトは、訪問者の年収(自己申告)が1000万円を超えているかどうかで、見られるサイトを変えました。お客さんから楽待PRの相談をいただいたとき、「不動産投資かあ、自分ら小市民には関係ないなあ」「貧乏人は見ないよなあ」という話で全員一致しました。そこで、元々のターゲットであるお金持ちにはペコペコ、我々のような貧乏人には急に態度をころころ変えて唾などを吐きかけてくるキャラクターを立てることにしました。普通だったら「年収の低い人をバカにするな」って叩かれるじゃないですか。でも逆にそういうものを逆手にとれると面白いかなと思いまして。
楽待の場合、クライアントさんが「バーグさんの好きなようにしてください」と寛容だったので、提案した通り企画が採用されました。あのサイトのノリはバーグのルーツである“テキストサイト文化”の面白さだと思います。キャラクターの表情やセリフのテキストで面白く世界観を構築していく、バーグらしい仕事でした。
●バーグハンバーグバーグ誕生のルーツ
―― 「テキストサイト文化がバーグらしさ」とういお話がありましたが、バーグハンバーグバーグ誕生の経緯を教えてください。
バーグのメンバーがまだ20代前半のとき、当時はテキストサイトブームでした。それぞれ文章やイラストで面白いサイトを作っては「ReadMe!」というランキングサイトに登録して、毎日出るランキングで競い合っていたんです。そこに参加しているみんなは、素人とは思えない面白い日記を書いていました。でも、みんな就職すると記事を書かなくなってくる。それはもったいない。このまま続けていける環境があり、これで飯を食っていけたらなと思い、僕とペパボ(※1)の同僚とで「オモコロ」(※2)を始めたんです。
※1 ペパボ:レンタルサーバー「ロリポップ!」など個人向けインターネットサービスを提供するpaperboy&co.。シモダさんも働いていた
※2 オモコロ:30人以上の個性的なスタッフで運営されるお馬鹿サイト。月〜金曜日まで平日は毎日更新
サイト開設当初は今みたいにスタッフが多くなかったので2日に1回程度の更新でした。当時は更新が面倒で、タグ打ちから含めてすべて自分でやらなければいけませんでした。また、今と違って予約投稿ができなかったので全部手動。記事を公開する0時前からパソコンの前に張り付いていないといけなかったんです。
そうすると毎日自由がないじゃないですか。だから編集、記事配信、トップページの更新作業もスタッフのみんなで手分けするようにして徐々に編集部体制ができていきました。サイトが充実していくうちに、徐々にお仕事をいただくようになって、DVDを作ったり、イベントをやるように。そして、これを会社にしようと思いました。
―― 「バーグハンバーグバーグ」という名前の意味は?
特にないです。これも大喜利で決めました。サイゼ(※1)で地獄のミサワ(※2)とかとワインを飲みながら「社名どうしよっか」と話してて、それぞれ案を出していきました。最終的に残った「株式会社 ルアンババンTHEサイガガーン」とどっちにしようかと迷ったのですが、電話対応のとき「お電話ありがとうございます。株式会社ルアンババンTHEサイガガーンです」だったら面倒くさそうだし、自己紹介のときも100%聞き直されるだろうし、あと舌噛みそうだしと思ってバーグハンバーグバーグに決めました。
※1 サイゼ:ドリア299円のファミレス「サイゼリヤ」
※2 地獄のミサワ:「カッコカワイイ宣言」などで知られる漫画家。オモコロに初期から参加
それに「会社なのに」っていうのがすごくいいなと思っていて、「会社なのにその名前!?」と一番振りきっていると思われる会社を作りたかったんです。企業理念も「がんばろう!」ですし。1つだけ誤算があるとすれば、社名は登記する前には飽きてました。
●企画の矛先は社員にも及ぶ
―― 突飛な企画はクライアントだけでなく、社員の方にも仕掛けられるとうかがいました。
ああ、デカいものを送りつけるシリーズですね。ハロウィーンのときに、社員にデカいカボチャを送りつけたんです。当時、オモコロのスタッフだった山口という男に声をかけて「加藤(同じくスタッフ)の家にいきなりデカいカボチャを送りつけよう」と計画しました。50キロほどのカボチャを見つけて、抱えて山口とはしゃいでるところを写真を撮ったりして、最後に加藤の住所を伝票に書いたんです。
でも実は、山口が来る前にお店には別の伝票を渡していました。そこには山口の住所が書いてあったんです。お店の前で「加藤くんびっくりするやろうなー」とはしゃいでいた山口でしたが、僕は内心、「これお前に届くんだけどな」と心の中でほくそ笑んでました。
送りつけた後、山口から「自宅に届いたとき、走馬灯のようにシーンがよみがえり、罠をかけられた経緯が一本につながった」と連絡が入ったときは嬉しかったですね。そのあともカボチャは自宅で保管していたそうですが、部屋で腐り、異臭を放ったそうで捨てようとしたそうなのですが、重すぎて処理するのが大変で、腐ったカボチャを抱えて運んでいる途中で皮がぼろぼろ崩れ、液状になったカボチャの中身が部屋中にこぼれたそうです。
オモコロでその一部始終を載せました。
※さらに最近では、山口さんの結婚祝いにシマウマを贈っている
―― デカいものを送りつけたのは1度だけではないそうですね。
実は1回ミスったことがあって……。そのときはイナバ物置(※)を送りつけようと思ったんです。が、お店に4万円を持っていったら、欲しい物置が5万円で買えなかったんです。部屋の中で物置を設置したら、部屋が2層に分かれて窓とかもなくなるからいいなと思ったのですが、残念でした。
※イナバ物置:「100人乗っても大丈夫」のCMでおなじみ
それで、代替案として豚の頭を送りつけることにしました。段ボールを空けた瞬間、「ギャア!」って言うかなーって思って。映画のセブンみたいですよね。しかも、ちょっと豚って皮膚の感じとか人っぽくもあるじゃないですか? (もらった人は)捨てるときも「なんか悪いことしてるんじゃないかってちょっとドキドキした」って言ってましたし。
●社員からも止められたタブー企画
―― さすがの社員の方も全員で止めにかかった企画があったそうですね。
いま思うと、小学生的な発想でお恥ずかしいのですが……。これはクライアントワークじゃなく、自分たちでイベントしたときの企画なんですけど、「犬のフンをお気に入りの皿に入れて、それをガンガン嗅ぎながら白米をがつがつ食べるドキュメンタリー」を撮りたいと思ったんです。
この撮影が結構大変でした。最近って飼い主のマナーが上がっていて、(フンが)道に落ちていなくて全然見つからないんです。犬のフンがとても貴重なものになっているんです。だからフンを手に入れるためにペットショップに協力を依頼するんですが、電話するたびにイタズラだと思われて電話を切られたりするんですよ。結局、十数件断られたので、直にペットショップに行って交渉してゲットしました。
で、いざ嗅ぎながら白米を食べる撮影当日、僕が別の用事があってどうしても撮影に参加できなくてほかのスタッフに任せたんです。でも上がってきた映像を見たら、犬のフンを嗅ぎながら白米を食ってるスタッフに対して「この辺で勘弁してやろう」みたいな撮影者の優しさが感じられたのでボツを出しました。「こういうときは優しさとかいらない、ごはんの上に載せるぐらいの勢いで。撮り直し!」と声をかけ、僕が監督になってやり直しました。ご飯を食う相手の鼻の前にフンを摘んだトングを持っていき、僕も嘔吐しながら撮影しました。そして自主企画のトークイベントの最後に「気分を害される方がいると思うんで嫌な人は帰ってください」と注意しつつ流してみたら思いのほかウケたんです。僕以外のスタッフは全員腑に落ちてない感じでしたけど。
結局、一番かわいそうだったのは、嗅ぎながらメシを食ったスタッフじゃなくて、その映像に映る全ての犬のフンにモザイクをあてていく作業を担当したディレクターですかね。「ずっと吐きそうだった」って言ってました。
●バーグハンバーグバーグで働くには?
―― バーグハンバーグバーグで働くためには相当強い個性が求められると思うのですが…
僕、あらかじめ知っている人とじゃないと一緒に働けないんです。面接1回でその人の能力とか性格とか分からないじゃないですか。
だから基本的に自社メディアでやってるオモコロのスタッフから採用してますね。そこで一緒に活動していて、今の会社に必要だなって人に声をかけています。ありがたいことに一般の応募ってすごい多いんですけど、でも基本採らないです。まだ周りに一緒にやりたいなという人がいるんですよね。もしほんとにオモコロ以外から取るとしたら、会社への理解があって、かつまだ社員にいないタイプ、自分とは違う視点を持っていて参謀役になってくれる人はいいなと思ってます。だからけんすうくん(※)みたいな人がいるといいんですけど、あいつ芋2個の報酬じゃ働いてくれないだろうしなぁ。
※けんすうくん:ハウツーメディア「nanapi」を運営するnanapiの代表取締役、古川健介さん
●初めて語られる、シモダさんの恋愛
先日、地獄のミサワさんが結婚していたことが発表され話題になった。シモダさんは逆に最近、離婚を経験した。元奥さんの結婚指輪はなぜかミサワさんがつけているという。
―― シモダさんって恋愛する時間はあるんですか?
ないことはないでしょうけど、僕、基本仕事優先になっちゃうんですよね。あとインドア派。なのでずっと家にいたいんです。ずっと出たくないんです。社員の柿次郎がBBQやるとか、海行こうとか言うんですが、「無理」。海で人に肌を見せるのがいやなんです。温泉とか、裸の付き合いじゃないですか。気持ち悪いですよね。
―― どういう恋人が良いですか?
向こうが小説読んで、こっちはマンガ読んでる、向こうはゲームやってて、こっちは足の毛の数を数えてる。それぞれが別のことやってるみたいな、「それ付き合ってるのか」と思われるかもしれませんけど、熟年夫婦みたいなノリがいいです。だから全然僕と付き合ってもつまらんと思うんです。こっちからどっかいこうとかいう提案は一切しないです。
―― なにフェチですか?
ほっぺたです、ほっぺたフェチです。頬ずり甲斐がある人がいいです。でも付き合うまでは頬ずりできないので、見た目で弾力ありそうだな、いい肉質だなとか思ってサイコパスみたいな目で見てます。だから柴咲コウみたいな美人系だと頬の肉厚がシュっとしちゃうので、YUKIみたいなプリンプリンの頬をしたマスコットキャラクターみたいな人がいいです。リスとかいいな。
―― ありがとうございました。最後に、人生最後になにか食べていいと言われたら、なにを食べたいですか?
栗です。
(岡徳之)
【関連記事】
・「仲間がドワーフばかりで困っています」 広告代理店が光の戦士募集中
・オカンに仕事を選んでもらう「オカンのおせっかい転職診断」
・バーグハンバーグバーグの公式アプリ:超まったりしてる4コマ漫画アプリ「うさねこ」 頭が疲れたら読むと良いよ!
・メールを読みたくない時の解決策は「下を向いてデリート」だ! 「バカサミット3」に学ぶ処世術
【インタビュー写真】
時に世の中を風刺するメッセージもある彼らの企画は、一見「ちょっとやりすぎか?」と思えることもあるが、毎回見たものの笑いを誘い、愛されている。一体、ネットでバズるコンテンツはどのようにして生まれているのか、バーグハンバーグバーグのルーツはどこにあるのか、代表のシモダテツヤさんに話を聞くため会いに行ってきた。
●クライアントに却下された“ボツ企画”
―― Webでウケる企画が定評のバーグハンバーグバーグさんですが、過去にクライアントからボツにされた企画案を教えてください。
ソフトバ○クのプロモーションで「12カ月で孫○義さんの肉体が完成するデアゴスティーニ(※)風プロモーション」を提案しました。毎月孫さんの肝臓とか顔とかのパーツがばらばらと届きます。で、11カ月で丸裸の孫さんができあがって、最終号に付いてくる鎖かたびらを首からぶら下げて完成と。もちろん創刊号はお得じゃないといけないので心臓を2つ付けるつもりでした。ちなみにこのときは、念のための代案も持っていきました。それが「こすると孫○義さんの耳の後ろの臭いがするスクラッチカード」でした。が、これもボツでした。
※デアゴスティーニ:毎月届くパーツを組み立てると模型等ができあがるシリーズが人気の分冊百科
味の○さんの「Cook Do」(※1)のときもボツになってしまいましたね。あの商品ってテレビCMでチンジャオロースをものすごくおいしそうに食べるじゃないですか。そこで、イケてるしヤバい長島さん(※2)ってハゲを小部屋に閉じ込めて7日間水しかあげず、餓死寸前まで追い込んでチンジャオロースをあげたらどうなるか、という実験をやろうとしました。でも本当に餓死してしまった場合はさすがに味の○さんにご迷惑をおかけするから、1週間味のないものだけをあげようと妥協案も提出しました。なにもかけてない豆腐だけを1週間あげ続けたら、人が発狂する寸前を見れるんじゃないか、さすがにおいしそうに食べるんじゃないかと思ったんです。
※1Cook Do:切った野菜や肉などの食材に加えて炒めるだけで料理ができてしまう中華合わせ調味料シリーズ
※2長島さん:イケてるしヤバい男 長島
●バーグハンバーグバーグ流のWebでウケる企画の作り方
―― ……ボツにしておくのがもったいない企画ばかりですね。Webでウケる企画ってどうやったら思いつくんですか?
基本的には社員全員でアイデア大喜利を行なっています。最初にプロモーションの目的とかを共有し、「普通に作るならこういう形」という話をします。そして、そこから一旦離れてボケにボケを重ねていきます。大喜利じゃないと突飛なものって出てこないんです。ボケにボケを重ねて、最後にお客さんのニーズと整合性を取るようにしています。
ちょっとふざけたような提案をして大丈夫なのかとよく言われますが、バーグはお笑いの会社なのでお客さんもウチに声をかけてくださる時点で、おふざけを期待されていると思うんですよ。最近はいろんな企業さんがコンプライアンスを気にしすぎてはっちゃけた企画ができなかったりします。怒られないようにと気にしすぎて、安全策を過剰に取りすぎてどっかで見たような面白くない企画になってしまうときってあるじゃないですか。もしそうなったら引くか、またほかの案を提案します。
―― 不動産投資サイト「楽待(※)」の特設サイトも大喜利で企画したんですか?
※楽待:国内最大の不動産投資サイト。特設サイトでは金持ちを持ち上げ、貧乏人を見下すキャラが登場
「楽待」のサイトは、訪問者の年収(自己申告)が1000万円を超えているかどうかで、見られるサイトを変えました。お客さんから楽待PRの相談をいただいたとき、「不動産投資かあ、自分ら小市民には関係ないなあ」「貧乏人は見ないよなあ」という話で全員一致しました。そこで、元々のターゲットであるお金持ちにはペコペコ、我々のような貧乏人には急に態度をころころ変えて唾などを吐きかけてくるキャラクターを立てることにしました。普通だったら「年収の低い人をバカにするな」って叩かれるじゃないですか。でも逆にそういうものを逆手にとれると面白いかなと思いまして。
楽待の場合、クライアントさんが「バーグさんの好きなようにしてください」と寛容だったので、提案した通り企画が採用されました。あのサイトのノリはバーグのルーツである“テキストサイト文化”の面白さだと思います。キャラクターの表情やセリフのテキストで面白く世界観を構築していく、バーグらしい仕事でした。
●バーグハンバーグバーグ誕生のルーツ
―― 「テキストサイト文化がバーグらしさ」とういお話がありましたが、バーグハンバーグバーグ誕生の経緯を教えてください。
バーグのメンバーがまだ20代前半のとき、当時はテキストサイトブームでした。それぞれ文章やイラストで面白いサイトを作っては「ReadMe!」というランキングサイトに登録して、毎日出るランキングで競い合っていたんです。そこに参加しているみんなは、素人とは思えない面白い日記を書いていました。でも、みんな就職すると記事を書かなくなってくる。それはもったいない。このまま続けていける環境があり、これで飯を食っていけたらなと思い、僕とペパボ(※1)の同僚とで「オモコロ」(※2)を始めたんです。
※1 ペパボ:レンタルサーバー「ロリポップ!」など個人向けインターネットサービスを提供するpaperboy&co.。シモダさんも働いていた
※2 オモコロ:30人以上の個性的なスタッフで運営されるお馬鹿サイト。月〜金曜日まで平日は毎日更新
サイト開設当初は今みたいにスタッフが多くなかったので2日に1回程度の更新でした。当時は更新が面倒で、タグ打ちから含めてすべて自分でやらなければいけませんでした。また、今と違って予約投稿ができなかったので全部手動。記事を公開する0時前からパソコンの前に張り付いていないといけなかったんです。
そうすると毎日自由がないじゃないですか。だから編集、記事配信、トップページの更新作業もスタッフのみんなで手分けするようにして徐々に編集部体制ができていきました。サイトが充実していくうちに、徐々にお仕事をいただくようになって、DVDを作ったり、イベントをやるように。そして、これを会社にしようと思いました。
―― 「バーグハンバーグバーグ」という名前の意味は?
特にないです。これも大喜利で決めました。サイゼ(※1)で地獄のミサワ(※2)とかとワインを飲みながら「社名どうしよっか」と話してて、それぞれ案を出していきました。最終的に残った「株式会社 ルアンババンTHEサイガガーン」とどっちにしようかと迷ったのですが、電話対応のとき「お電話ありがとうございます。株式会社ルアンババンTHEサイガガーンです」だったら面倒くさそうだし、自己紹介のときも100%聞き直されるだろうし、あと舌噛みそうだしと思ってバーグハンバーグバーグに決めました。
※1 サイゼ:ドリア299円のファミレス「サイゼリヤ」
※2 地獄のミサワ:「カッコカワイイ宣言」などで知られる漫画家。オモコロに初期から参加
それに「会社なのに」っていうのがすごくいいなと思っていて、「会社なのにその名前!?」と一番振りきっていると思われる会社を作りたかったんです。企業理念も「がんばろう!」ですし。1つだけ誤算があるとすれば、社名は登記する前には飽きてました。
●企画の矛先は社員にも及ぶ
―― 突飛な企画はクライアントだけでなく、社員の方にも仕掛けられるとうかがいました。
ああ、デカいものを送りつけるシリーズですね。ハロウィーンのときに、社員にデカいカボチャを送りつけたんです。当時、オモコロのスタッフだった山口という男に声をかけて「加藤(同じくスタッフ)の家にいきなりデカいカボチャを送りつけよう」と計画しました。50キロほどのカボチャを見つけて、抱えて山口とはしゃいでるところを写真を撮ったりして、最後に加藤の住所を伝票に書いたんです。
でも実は、山口が来る前にお店には別の伝票を渡していました。そこには山口の住所が書いてあったんです。お店の前で「加藤くんびっくりするやろうなー」とはしゃいでいた山口でしたが、僕は内心、「これお前に届くんだけどな」と心の中でほくそ笑んでました。
送りつけた後、山口から「自宅に届いたとき、走馬灯のようにシーンがよみがえり、罠をかけられた経緯が一本につながった」と連絡が入ったときは嬉しかったですね。そのあともカボチャは自宅で保管していたそうですが、部屋で腐り、異臭を放ったそうで捨てようとしたそうなのですが、重すぎて処理するのが大変で、腐ったカボチャを抱えて運んでいる途中で皮がぼろぼろ崩れ、液状になったカボチャの中身が部屋中にこぼれたそうです。
オモコロでその一部始終を載せました。
※さらに最近では、山口さんの結婚祝いにシマウマを贈っている
―― デカいものを送りつけたのは1度だけではないそうですね。
実は1回ミスったことがあって……。そのときはイナバ物置(※)を送りつけようと思ったんです。が、お店に4万円を持っていったら、欲しい物置が5万円で買えなかったんです。部屋の中で物置を設置したら、部屋が2層に分かれて窓とかもなくなるからいいなと思ったのですが、残念でした。
※イナバ物置:「100人乗っても大丈夫」のCMでおなじみ
それで、代替案として豚の頭を送りつけることにしました。段ボールを空けた瞬間、「ギャア!」って言うかなーって思って。映画のセブンみたいですよね。しかも、ちょっと豚って皮膚の感じとか人っぽくもあるじゃないですか? (もらった人は)捨てるときも「なんか悪いことしてるんじゃないかってちょっとドキドキした」って言ってましたし。
●社員からも止められたタブー企画
―― さすがの社員の方も全員で止めにかかった企画があったそうですね。
いま思うと、小学生的な発想でお恥ずかしいのですが……。これはクライアントワークじゃなく、自分たちでイベントしたときの企画なんですけど、「犬のフンをお気に入りの皿に入れて、それをガンガン嗅ぎながら白米をがつがつ食べるドキュメンタリー」を撮りたいと思ったんです。
この撮影が結構大変でした。最近って飼い主のマナーが上がっていて、(フンが)道に落ちていなくて全然見つからないんです。犬のフンがとても貴重なものになっているんです。だからフンを手に入れるためにペットショップに協力を依頼するんですが、電話するたびにイタズラだと思われて電話を切られたりするんですよ。結局、十数件断られたので、直にペットショップに行って交渉してゲットしました。
で、いざ嗅ぎながら白米を食べる撮影当日、僕が別の用事があってどうしても撮影に参加できなくてほかのスタッフに任せたんです。でも上がってきた映像を見たら、犬のフンを嗅ぎながら白米を食ってるスタッフに対して「この辺で勘弁してやろう」みたいな撮影者の優しさが感じられたのでボツを出しました。「こういうときは優しさとかいらない、ごはんの上に載せるぐらいの勢いで。撮り直し!」と声をかけ、僕が監督になってやり直しました。ご飯を食う相手の鼻の前にフンを摘んだトングを持っていき、僕も嘔吐しながら撮影しました。そして自主企画のトークイベントの最後に「気分を害される方がいると思うんで嫌な人は帰ってください」と注意しつつ流してみたら思いのほかウケたんです。僕以外のスタッフは全員腑に落ちてない感じでしたけど。
結局、一番かわいそうだったのは、嗅ぎながらメシを食ったスタッフじゃなくて、その映像に映る全ての犬のフンにモザイクをあてていく作業を担当したディレクターですかね。「ずっと吐きそうだった」って言ってました。
●バーグハンバーグバーグで働くには?
―― バーグハンバーグバーグで働くためには相当強い個性が求められると思うのですが…
僕、あらかじめ知っている人とじゃないと一緒に働けないんです。面接1回でその人の能力とか性格とか分からないじゃないですか。
だから基本的に自社メディアでやってるオモコロのスタッフから採用してますね。そこで一緒に活動していて、今の会社に必要だなって人に声をかけています。ありがたいことに一般の応募ってすごい多いんですけど、でも基本採らないです。まだ周りに一緒にやりたいなという人がいるんですよね。もしほんとにオモコロ以外から取るとしたら、会社への理解があって、かつまだ社員にいないタイプ、自分とは違う視点を持っていて参謀役になってくれる人はいいなと思ってます。だからけんすうくん(※)みたいな人がいるといいんですけど、あいつ芋2個の報酬じゃ働いてくれないだろうしなぁ。
※けんすうくん:ハウツーメディア「nanapi」を運営するnanapiの代表取締役、古川健介さん
●初めて語られる、シモダさんの恋愛
先日、地獄のミサワさんが結婚していたことが発表され話題になった。シモダさんは逆に最近、離婚を経験した。元奥さんの結婚指輪はなぜかミサワさんがつけているという。
―― シモダさんって恋愛する時間はあるんですか?
ないことはないでしょうけど、僕、基本仕事優先になっちゃうんですよね。あとインドア派。なのでずっと家にいたいんです。ずっと出たくないんです。社員の柿次郎がBBQやるとか、海行こうとか言うんですが、「無理」。海で人に肌を見せるのがいやなんです。温泉とか、裸の付き合いじゃないですか。気持ち悪いですよね。
―― どういう恋人が良いですか?
向こうが小説読んで、こっちはマンガ読んでる、向こうはゲームやってて、こっちは足の毛の数を数えてる。それぞれが別のことやってるみたいな、「それ付き合ってるのか」と思われるかもしれませんけど、熟年夫婦みたいなノリがいいです。だから全然僕と付き合ってもつまらんと思うんです。こっちからどっかいこうとかいう提案は一切しないです。
―― なにフェチですか?
ほっぺたです、ほっぺたフェチです。頬ずり甲斐がある人がいいです。でも付き合うまでは頬ずりできないので、見た目で弾力ありそうだな、いい肉質だなとか思ってサイコパスみたいな目で見てます。だから柴咲コウみたいな美人系だと頬の肉厚がシュっとしちゃうので、YUKIみたいなプリンプリンの頬をしたマスコットキャラクターみたいな人がいいです。リスとかいいな。
―― ありがとうございました。最後に、人生最後になにか食べていいと言われたら、なにを食べたいですか?
栗です。
(岡徳之)
【関連記事】
・「仲間がドワーフばかりで困っています」 広告代理店が光の戦士募集中
・オカンに仕事を選んでもらう「オカンのおせっかい転職診断」
・バーグハンバーグバーグの公式アプリ:超まったりしてる4コマ漫画アプリ「うさねこ」 頭が疲れたら読むと良いよ!
・メールを読みたくない時の解決策は「下を向いてデリート」だ! 「バカサミット3」に学ぶ処世術