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カプセルトイ「ガチャ」開発の秘密を聞いてきた!(※ボツネタ含む)

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 タカラトミーアーツは、「おかしな」シリーズや、「スマート飯」「プリティーリズム」をはじめとしたオリジナル製品、ディズニーや「ポケットモンスター」などのキャラクター製品など、数多くの非常にユニークな製品を開発しています。その中でも、カプセルトイ「ガチャ」シリーズは長い歴史のある製品ラインアップのひとつです。

【ガチャはこうして作られる】

―― タカラトミーアーツの「ガチャ」といえば、バンダイの「ガシャポン」といっしょに、ショッピングモールや家電量販店などのカプセルトイコーナーに必ず設置されているという印象があるのですが、いったいいつぐらいから「ガチャ」という製品はあるのでしょうか?

羽場氏 「ガチャ」の歴史は、タカラトミーアーツの前身である、ユージンの時代にはじまっています。1988年に、初めて製品をリリースしていますから、25年の歴史があることになりますね。

●大きく射撃も可能な「THE 銃」シリーズ

―― ユージンからタカラトミーアーツになって、「ガチャ」に関して何か変わったことはあったのでしょうか?

東氏 ユージンは、2009年に小物玩具事業のユーメイト、ぬいぐるみ事業のハートランド、食玩事業のすばる堂と統合するのと同時に、新社名「株式会社タカラトミーアーツ」となったのですが、その際、特に「ガチャ」の企画開発の方法は変わっていません。

 基本的に元ユージンの「ガチャ」を企画開発していた部署が「ガチャ」を作り続けていますから、担当者がやりたいと思った企画が通りやすく、ばんばんやらせてもらえるという社風もそのままですね。

 弊社は、キャラクターものもありますが、オリジナル製品も多いのです。キャラクターものは一定の売上げが見込めるものの、ライセンス料がかかります。オリジナルだとライセンス料がかからないので製品化するための敷居が低くなり、種類を多く出せるという強みがあるんです。

―― タカラトミーアーツのというか、ユージンのというか、「ガチャ」には「なんじゃこら?」という独特なオリジナル製品が多い気がするのはそのためなんですね。まずは、そんな中でもインパクトのあるものを見せていただきたいのですが、どんなものがありますか?

東氏 ユージン時代から、様々な「ガチャ」を出していて、インパクトがあるものがたくさんあります。ただ、大きさとギミックによるインパクトということでは、この「THE 銃(ザ ガン) Part15 ガトリングガン編」ですね。

―― 確かにこれは、大きいですね。これも200円なんですか?

東氏 ええ。私も一度カプセルから出してしまうと、なかなか元に戻せなくなるほどカプセルぎりぎりの製品で、もちろんこれも200円です。ただ、さすがに同じシリーズすべてがこのサイズではなくて、いわばアタリの製品なんですね。

 でも、アタリを入れるために200円以下のハズレ製品を混ぜるということはしていなくて、すべて200円の価値がある製品で、その中にちょっとお得な製品が含まれているという位置づけです。

―― あれ? これはハンドルが回るんですか?

東氏 「THE 銃」シリーズはすべて弾が発射できるんですよ。やっぱり、玩具とはいえ弾を発射しないと銃ではないですからね。ギミックも年々進化を続けていて、2013年6月発売予定の「THE 銃 Part22 オートマチックリバイバル編」だと、ブローバックもします。

 他社さんだと、ディティールに凝ったり、リアリティのある造形をという方向で開発が進むことが多いと思います。でも、「ガチャ」の「THE 銃」シリーズは開発当初より、リアルな造形はもちろん、発射ギミックは外せないということで一貫しています。おかげさまで皆さんに支持していただいて、ロングセラーシリーズに育っています。

●「ガチャ」ができるまで

―― なるほど。キャラクター製品だけでなく、オリジナル製品でロングセラーシリーズを持っているというのは強いですよね。ところで、普段見られないボツ企画も見せていただけると聞いて楽しみにしてきたのですが。

羽場氏 ちゃんと用意していますよ! ただ、ボツ企画をお目にかける前に、「ガチャ」の企画がどのように製品になるのか、というのを説明したほうが分かりやすいと思います。ボツにもいろいろありますので。

 まず最初に、各担当者がテレビ、雑誌、Web媒体、スマートフォンのアプリ、もうあらゆるものにアンテナを張り巡らして企画を考えます。ちなみに私は、新婚旅行中に企画を思いついたことがあります。

 そして、各担当者が考えた企画は月1回、2日間かけて行われる、「企画会議」に提出されます。参加するのは、企画開発者と営業担当者がメインなのですが、企画が出したものに営業がダメ出しをするようなことは少なくて、「もっとおもしろくするにはどうするんだ?」という議論がかわされることが多いですね。「これはストラップじゃなくて、フィギュアのほうがウケルだろう」とか。

羽場氏 そこで「おもしろい」「イケル!」となった企画が「商品決定会議」にかけられます。これは「企画会議」よりも、もっとシビアに、実際にかかるコストや採算の取れる受注数量があるのかなどが考慮され、本当に製品化するかどうかが決定されます。「商品決定会議」で製品化が決定すると、そこで製品化がスタートするわけです。

 製品化がスタートすると、フィギュア製品であれば、型を作るための原型制作に入ります。だいたい1つの企画が製品になるまで、半年ぐらいかかりますので、常時、担当者1人当たり、10から18ぐらいの企画が同時進行していることになります。

 この原型が仕上がったときというのが、かなりテンションが上がる瞬間です。まだ彩色はされていないのですが、今まで二次元のイラストだった自分の好きなキャラクターが立体化するというのは、何度、経験しても嬉しいものなんですね。

羽場氏 それで原型をチェックして、版権元がある場合にはそれをチェックに出します。海外の映画関係などが大変なのですが、画像でよければ画像を送り、実物が見たいということであればサンプルを送ります。

 原型のチェックが終わってOKだということになって、サンプルや製品ポップなどを作成し、「ガチャ インフォメーション」、我々は「受注書」と呼んでいますが、最後のページが注文書になっている問屋さん向けの冊子ですね、その図案の用意をします。

 実は原型制作と同じぐらい、「受注書」の図案制作も大事なんです。どんなによい製品でも、受注書でよく見えないと発注が来ないわけですから。それでまた、普通の玩具広告と違って「受注書」は一般のお客様が見るのではなく、ご年配の方もいらっしゃる問屋のご担当者向けなので、字を大きく分かりやすくしたり、売れているシリーズの第何弾であるとか、過去の売上げはこれだけあったとか、「おもしろさのアピール」だけでなく「データで攻める」という独特な作り方をしています。

●ボツ企画になる理由

―― ありがとうございました。「ガチャ」制作の裏側がよく分かりました。タカラトミーアーツの皆さんは、ノリのよい方ばかりという印象だったのですが、決してノリだけで仕事しているわけでないんですね(笑)。

羽場氏 ノリがよいのは認めますが、ノリだけでないのが分かってもらえてよかったです(笑)。それでは、制作過程を理解していただいたところで、ボツ企画を紹介します。まずは、もうこれは明らかにボツだろうと、自分でもそう思ってやっていたという「ゾンビ」シリーズですね。

―― あれ、これは通常の企画書という感じではないですね?

羽場氏 この企画は「絶対通らないだろうな」と確信があったんですが、夜中に作業していたら異様に楽しくなってここまで仕上げてしまいました。これは「ガチャ」の機械に入れるPOP(ポップ)なのですが、本来、POP案を作るのは製品化が決まった後です。

東氏 えっ!? ずいぶん熱心だったし、POPも「よくできているな」と思って見ていたので、「ダメだ」と思ってやっていたとは思いませんでしたよ(笑)。

羽場氏 そこはほら、ウチはとりあえず、いろんな企画、数を出してナンボというところがあるじゃない。何作も何作も続いているシリーズもののロボットアニメとか、マンガ原作の某人気アニメとか、ロングセラー絵本原作のアニメキャラみたいな、強力な定番版権もののシリーズがいっぱいあるわけじゃないから(笑)。

羽場氏 あ、でも、予想通り、「コスト分、回収できないだろう」となって、この「ゾンビ」企画はダメだったのですが、ちゃんと製品化された「ゾンビ」ものもありますよ。

―― なんかどこかで見覚えがあるような街並みと、フィギュアですね……。

羽場氏 実はこれ、製品名からも分かるように「カプセルタウン」というオリジナルシリーズの金型を使っているんです。コストがかかる部分というのはやはり原型制作から金型制作の部分なので、そこを流用することで大幅にコストダウンできるんですね。

 ほかの「カプセルタウン」と成形は同じで、カラーやシールの違いで「ゾンビ」らしさを演出しているんです。これはもう、とにかく「ゾンビ」ものの企画を1本、絶対に通そうと戦略を練りに練った企画だったので、狙い通りに「コストかからないんなら、やってみれば」と製品化までこぎ着けました。

―― 今のは企画段階で通らなかったというお話でしたが、ほかにもボツのパターンはあるということですか?

羽場氏 あります。これがそうなんですが……。

羽場氏 企画会議での評判は上々でとんとん拍子で開発は進んだのですが、受注書を発行した段階で受注数を取ることができず、生産にいたらなかったというボツ企画なんです。実は、新婚旅行中に思いついた企画というのがこれで、遺跡に行って感銘をうけ「マヤ文明、いつかは製品にしよう!」と思っていたものがなかなか実現しなかったんですね。それが、2012年人類滅亡説が話題になったので、それに合わせて出してやろうと意気込んだのですが……。

 まあ、社内で好評だからといって、問屋さんにどうかというと分からないですし、問屋さんで評判になっても、実際の売れ行きがよいかというとなかなか一致しないものです。逆に、受注が少なくてあまり生産しなかったら、売り切れ続出ということもありますし。長年のノウハウから極力在庫を持たないようにしているので、そういうことがあったときでも大事にはいたらないようにはなっているのですが。

―― 貴重なボツねたをありがとうございました。最後にオススメの「ガチャ」を教えてください。

―― 楽しい製品の数々、ありがとうございました。でも、これだけラインアップがあると、なかなか自分がほしい「ガチャ」がどこに設置されているのか分からないという悩みがあります。家電製品と違って発売日もよく分からないことがありますし。

東氏 実は、弊社にお問い合わせていただいても、どこに何が設置されているのか細かく把握できておらずお答えできないという、非常に悩ましい状況があったんです。でも、2012年8月に開設されたWebサービス「おしえて! ガチャ検索」で「ガチャ」製品の何がどこあるか分かるようになったんですよ。何がいま検索されているのかランキングも見ることができますから、一度ぜひ使ってみてください! パソコンだけでなく、スマートフォンやガラケーにも対応しているんですよ。


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