どうも、漫画家のやしろあずきです。
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皆さんは炎上、したことありますか?
インターネットを全く使っていない人は「炎上」と言われると火事なんかを連想すると思いますが、この記事を読んでいる人の大半は、きっと非難が集まる方の「炎上」を思い浮かべたのではないでしょうか。自分の不注意な、不用意な投稿によって全てのネットユーザーが敵に回り、一瞬で(悪い意味での)有名人になってしまう……。今回はそんな「炎上」がテーマです。
SNSが発展してきた現在、炎上という言葉は辞書に載るほどに浸透しており、特に未成年のSNSユーザーによる炎上は今もなお定期的にネット社会、場合によってはニュース番組で報道されたりして世間を揺るがし続けています。一時期はTwitterの検索で写真にお酒が写りこんでいる未成年と思わしきアカウントをサーチして大勢で突撃する、秘密警察のようなアカウントまで存在していました。
このように絶えることなくネットで話題となる「炎上」ですが、その内容を見る度、毎回思うことが僕にはあるんです。
それをツイートしたら炎上するって普通分からない?
だって明らかにやっちゃいけないことじゃん。やっちゃいけないことを全世界の人が見れる場所で書いたら、そりゃ怒られるでしょ。「それなのに何で書いちゃうの……?」って皆さんも思ったことありませんか?
そこで今回は結構ガチな感じで炎上した人にインタビューしました。ダメ元で取材を申し込んでみたところ、プライバシーを完全に守っての取材だったら問題ないとのことで、お話を聞かせてくれることになりました。マジかよ。未成年のSNS炎上について、実際に炎上した人に根掘り葉掘り聞いていきたいと思います!!!
●SNSはどういう使い方をしてたの?
やしろ「本日はよろしくお願いいたします。あの、本当に大丈夫なんですか?」
男性「はい。炎上した僕の話がSNSを使い始めの若い人たちのタメになれば良いなって思っていますので。あ、ただ身バレは怖いんで顔とか服とかも全部分からないようにしてくれれば……」
やしろ「そのあたりはご安心ください、分からないようにイラストにしますので。では……まず炎上したのは学生の時なんですよね。そのころのSNSはどういった使い方をしていたか教えてください」
男性「友達に誘われてLINEとTwitterをやっていました。炎上したのはTwitterの方ですね」
やしろ「なるほど、Twitterは本名でやっていました? 顔写真とかもガンガンあげたり?」
男性「そうですね。誘ってくれた友達もそうだったので……名前も本名で、自分の顔写真はもちろん、友達と写っている写真とかもアップしていました。鍵も付けずに。今考えればそれが間違いの始まりでしたね……」
やしろ「まあ、友達に誘われたのだしそれはしょうがないと思うけど……では基本的に友達しかフォローしてない、完全に内輪で会話する用のアカウントだったんですね」
男性「はい。フォローもフォロワーも全然多くなかったです。炎上してからはめちゃくちゃ増えましたが……ツイートの内容も本当に友達との遊びの話や、学校だるい、とかの何の面白みもないものばかりでしたね」
やしろ「なるほど、普通の学生のリア垢って感じだ」
●炎上って知ってた? 自分がするとは思わなかった?
やしろ「まず、いわゆる『炎上』のことは知っていました?」
男性「あ、それは知っていたんですよ。結構話題になることもあって。学校でネットリテラシーについての話を聞いたこともあります」
やしろ「え!? 知ってたのか……てっきりそういうことを何も知らないでTwitterをやっていたのかと思っていました。しかも学校でも注意されていたんですね。それは過去の炎上例とかを見せられてこういうツイートをしちゃいけないよーとか?」
男性「そんな感じですね。そこまで具体的じゃないんですけど、警察沙汰にもなるとか、ネットの怖さみたいなことを説明された記憶があります」
やしろ「それでも炎上しちゃったんだ」
男性「しちゃいましたね……」
やしろ「まさか自分が炎上するとは思ってなかった?」
男性「ぶっちゃけ本当にそれですね。学校でそういう説明をされた時には怖いな〜とは思っていたのですが、僕は友達しかフォロワーいないし、炎上なんて全く関係ない別次元の話としか思えていなかったんだと思います」
やしろ「じゃあ特にその説明を受けてからも、ツイートの内容に気を付けようとか個人情報に気を付けよう、とかは思ってこなかったんですね」
男性「そうですね。完全に他人事だと思ってました……」
●なんで炎上したの?
やしろ「ここからは結構プライバシーにも関わってきちゃう質問になるので、個人が特定されそうなワードに関してはぼかして書いてきますが……どう炎上したのか、炎上の経緯について聞きたいです」
男性「はい。Twitterを使い始めて少したって、ちょっとずつ使い方も分かってきて……そのころから有名人のアカウントを見たり、その人に対してリプライを送るのにハマってきちゃったんですよね」
やしろ「なるほど」
男性「最初は普通に感想とかをリプライで送っていたんですけど、まあ当たり前ですけど返事は返ってこなくて」
やしろ「まあそれはしょうがないですよね。ものすごく有名な人とか絶えずリプライ送られ続けているようなものだし……」
男性「なんだろう、それで有名人のアカウントって有名人が直接見ているものじゃないと勝手にどこかで思い込んじゃったのか、相手が本当にその人本人なんだっていう意識が欠落していたというか……めちゃくちゃな内容のリプライを送ったり、絶対に嫌がるだろって内容のこととかも送るようになってしまって」
やしろ「あー……」
男性「それでこう、バーっと……」
やしろ「炎上したわけですね」
男性「しましたね……はぁ、やっぱり思い出すと嫌な気分になっちゃいますね。当時の自分に対してですが……」
●炎上中はどんな感じだった?
やしろ「炎上したって気付いたのはやっぱり通知がすごかったから?」
男性「はい。でも僕はTwitterの通知を元々切ってたんですよ。なので朝起きたら友達からLINEがめちゃくちゃ来てて、『お前やばいぞ!』って……」
やしろ「うわあ、朝起きたときそういうLINE来てると一瞬で心臓が破裂しそうになりますよね。出社を忘れてたときとかよくあったな……」
男性「出社って忘れるものなんですか? まあ、それで何がなんだか分からずにTwitterを見たら……フォロワーがめちゃくちゃ増えてて、例の……炎上する原因となったツイートもありえないくらいにリツイートされてて……」
やしろ「何が起きてるか分からなかった?」
男性「数分間は携帯の前でどんどん拡散されていくツイートを見ながら呆然としてました……。でも、だんだん頭の中が冷静になるにつれて、ああ……やっちまった……って」
やしろ「そこで炎上してしまったっていう自覚が芽生えたわけですね」
男性「はい、でも正直混乱してて、どうしていいか分からず……友達にLINEで相談したら『とりあえずツイート消せ!』って言われて、すぐにツイートを消しました。ツイートを消すことができるってこと自体忘れるほど混乱してましたね……」
やしろ「なるほど、炎上の火の元を消してしまおうと。ツイ消しですね。でもそれで『はい、炎上終了』ってことはないですよね……」
男性「そうなんですよね。今となってはあの時謝罪もせずにツイートを消したのは間違いだったとも思います。でも当時はツイ消ししてちょっと安心もしてました。消したしこれ以上は大丈夫だろう……という」
やしろ「でもそうではなかった」
男性「はい……むしろ消した瞬間『逃げたぞ!!!!』って認知されたみたいで……いや、実際逃げたんですけど、火の元のツイートのキャプチャー画像とか無限に送られ続けてきたし『逃げるなクソガキ』みたいなリプライももう1分間に何通も来て……自分が悪いって自覚はもちろんあったんですが、めちゃくちゃ怖かったですね……」
やしろ「まあ、そりゃ怖いですよね……」
男性「当日、学校もあったんですがさすがに行ける気持ちじゃなくて、休んでずっと布団の中で携帯を見て震えてました」
やしろ「Twitterで謝罪するって考えとかは特になかったんですか?」
男性「はい……というか、自分からもう発言するのが怖すぎて……ツイ消しだけであんなになってしまったのだから、何か発言しようものならどうなるんだ……って、何もできなくなってしまいましたね。そうしたら友達の1人からLINEが来て『もうアカウントを消すしかない』って」
やしろ「垢消しですね。炎上した人は大半こうなる」
男性「ですね。その友達は『垢消しは最後の手段』みたいな感じで言ってたんですが、多分そいつはTwitterで結構フォロワーとか多いからアカウントの価値観が僕と違ってて……僕はもう『そうだ、消せるんだ!! 今すぐ消そう!!!』って感じですぐにアカウントを削除しました」
やしろ「何のためらいもなかったんですね」
男性「はい。消してしまえば見なくて済むし、拡散だってしようがないと思いまして……でもそんなに甘くなかったです」
やしろ「あれ? でもアカウントを消したら完全勝利! とかネットで騒がれて炎上が終わるパターンも結構ありませんか? まだ終わらなかったんだ」
男性「多分、それは表面上ですね。僕の場合もネットだと『あいつアカウント消して逃亡! 完全勝利!』みたく言われてたと思います。ネット上で一見鎮火したように思えても、こっちはリアルがありますから。ネットの炎上はリアルに燃え移ってからが地獄です」
やしろ「そうか……リアルではアカウントとか消しようがないですもんね、逃げられない」
男性「リアルでアカウント削除といったら自殺するしかないですね」
やしろ「めちゃくちゃ怖いこと言わないでよ」
男性「で、まあTwitterのアカウントを消したあと何があったかっていうと、本名や学校、住所まで特定され公開されたんですね。まあ名前とかは元々自分で公開してたんですが……」
やしろ「うわあ……」
男性「Twitterのアカウントを消したことで終わったと僕は思っていたんですけど……やっぱりちょっと気になって全然適当な名前でTwitterのアカウントを作り直し、自分の名前で検索してみたんですよ」
やしろ「ほうほう」
男性「そしたら、僕の関係者しか知りえないような情報も出回っていて……。真相は分かりませんが、身近な人が情報の出どころなのかもと思って。……もう頭が真っ白になりました」
●炎上後はどうなった?
やしろ「炎上してアカウントを消したはいいけど、結果自分の個人情報がTwitter上に公開される事態になってしまったと……それは学校にも行けなくなりますよね、その後どうしたんですか?」
男性「結論から言うと、不特定多数の人から学校に電話がかかってきていたようで、学校から事情聴取で呼び出され、その過程で親にもバレ、友達もどこかよそよそしくなって友達も信じられなくなり、引っ越しすることになりました」
やしろ「めちゃくちゃ畳み掛けてきた。うーん……辛い……」
男性「辛いって思ってくれるのはありがたいのですが、本当に悪いのは僕なので……」
やしろ「そうか……まあそうだけど……。うーん、本当に1つのツイートが人生を変えちゃったって感じですね」
男性「はい、それも悪い方にドーンと。あの時、僕がツイ消しをして逃げたりなんかせず、素直に自分が悪いことをしたと謝罪していたら……もしかしたら今と何も変わらなかったのかもしれませんが……少しは良い方向に炎上が収まっていったんじゃないか……と今でも後悔しています」
はい、長くなってしまったので前編はここまでにしておきます。後半は割と重い話が多くて、聞いていて苦しくなりました……。
また、前述の通り本人の特定を防ぐため実際の内容からは少し改変している部分もありますので、そのあたりはご了承ください。
それにしても、やはり炎上は怖いですよね。ネットの炎上がリアルに燃え移ったら終わり……まさにその通りだと感じました。
後編はなぜ炎上しそうなツイートをしてしまうのか、炎上を防ぐためにはどうしたらいいのか、今SNSを使っている未成年に言いたいことなど……「炎上させてしまう」側から見た心理などを聞き取っていきたいと思います。
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